STORYプロジェクトストーリー

東北事業TOHOKU

千原 昇悟

千原 昇悟

ICT事業グループ ICT技術本部
eシステム部 第一技術課

一大事業〈鍬台地区外電源ケーブル敷設工事〉から学んだこと。

あの大地震と津波を経て

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大学を卒業し、新卒でシーキューブに入社。ICT事業グループに所属し、その後ずっと今日まで施工管理の仕事に従事してきました。そんな私にとってキャリア中最大規模、そして会社としても極めて特殊な取り組みとなったのがこの事業、〈鍬台地区外電源ケーブル敷設工事〉です。
2011年に東北地方を襲ったあの大地震と津波によって、三陸沿岸地域では幹線道路の国道45号線が寸断され、人の移動や物流が滞る事態となりました。そこで、国土交通省が国道45号線の第2ルートの建設と、その周辺整備に乗り出したのです。それがこの敷設工事でした。
工事エリアは岩手県釜石市から陸前高田市まで。工事するトンネルは全部で7つ、それらのトンネル内の電気通信設備への電源線供給がこの工事の目的です。私たちシーキューブは施工管理者として現場に入りました。
工事は2017年8月15日からスタートし、のちに工期の延伸もあって、最終的には2019年1月28日までかかりました。本当に長くて、遠くて、ひたすらに寒い、一筋縄ではいかない大工事でしたね。

何より大変だった他業者との連携

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大変だったことは数え上げるときりがありません。例えば、トンネル工事に入られている複数の業者さんとの連携ですね。
電源ケーブルというのは丸い配管の中を通すのですが、その配管を設置するのはいわゆる道路を作る舗装業者さん。業者さんは道路を作りながら配管を設置してゆくので、そうなるとその業者さんの作業がその日どれだけ進んでいるか、というところがうちにとって重要になってきます。もちろんうちも、その日にすべき作業の計画は立てていますから、業者さんの作業の進捗に合わせっきりにするなど不可能です。余計な日数も、コストもかかってしまいますから。 他にも当社のような工事業者が3社、この事業に参加していました。当社を含めて4社間で「どういうケーブルを通すためのどういった配管が、いつまでに何本必要か?」といったことを常に協議し、私が業者を代表して結果を取りまとめ、図面化して舗装業者さんに伝えていました。そういった、各業者に角を立てないよう調整してもらうための交渉はとても骨が折れましたね。でも、結局は誰かがやらなければ始まらないことですから。

コミュニケーションを密に取ることで乗り越えた

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そして待望の配管が設置されると、待ってました!とばかりに4業者すべてが作業場に集まるんです。すると密になりすぎて作業が何ともしづらい(笑)。 なので、今度はまたその電気工事業者だけで「何月何日このエリアはうちがやるから空けてください」という取り決めについて、協議会の場を使って何度も話し合いました。時間に余裕があるうちは皆さん冷静に話されるのですが、工期が迫ってくると焦って大声になる場面もありましたね。当社を含め、発注を受けている4業者にはそれぞれに発注元が別にあるので、結局のところ情報伝達も何もかも縦割りになってしまうんです。
しかし、所詮は人と人とで成してゆくのが仕事の本質。きちんと話し合いの場を持ち、コミュニケーションさえ取れば、お互いが譲歩し、お互いが融通を利かせてくれると信じ、これに挑んでいました。

東北地方の想像を絶する寒さ

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もう一つ、作業の手を鈍らせた、我々の天敵とも言えるもの。それが、東北地方の容赦ない寒さでした。寒いとは聞いていましたが、まったくもって想像を絶する寒さでしたね。
外気温計というのがあるのですが、日によってはマイナス12度などという日もありました。また沿岸地域なので常に強風が吹き、体感ではもっと寒く感じるのです。もちろんトンネルの中に暖房など一切ありません。防寒着などまったく役に立ちませんでしたね(笑)。 それでもシーキューブは施工管理者、つまり作業を管理する立場ですので、じかに手でケーブルを引っ張るといった作業はありませんでした。本当に辛かったのは下請けの作業員さんの方ですね。細かい作業もするので、分厚い手袋もはめていては仕事にならないんです。手も痛かっただろうと思います。極寒の中、最後まで本当にがんばって頂きました。

工事の終了を告げる光

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そうして1年と5か月が過ぎ、〈鍬台地区外電源ケーブル敷設工事〉は無事故・無災害で完了。2019年1月28日に工事を終え、翌2月7日に実施された完成検査も無事に合格しました。
嬉しかったのは、シーキューブが10数社ある設備業者の中で、なんと一番乗りで現場を終えられたこと。決め手としては、業者間の取りまとめを率先してやっていたこともあり、うちにとってある程度優位に工事を推し進めることができたから、というのは要素としてあるかもしれません。
私たちが施工した電源ケーブルが、7つのトンネル内外のあらゆる設備に電気を供給し、すべての機器が正常に動作した時。胸が熱くなりました。こういった工事の場合、電気を通すのは作業の最後、つまり最終的な調整などを完全に済ませてからなのです。完成したこと、工事をやり遂げたことを告げるその光はどこまでも眩しく、あたたかく感じられました。

シーキューブの強さである「連携力」

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最終的に、全7トンネルに総延長170㎞以上の電源ケーブルを敷設しました。トンネルの長さ自体は32.1㎞なのですが、一つのトンネルの中に何本もケーブルを這わせているので、それらすべてを合わせたら170㎞を超えるという結果になったのです。
現場でのチームは私、そして相沢翔真さんと伊藤宗昭さんの三人。年齢も近く、何でも話し合える働きやすい環境でした。そして経験豊富な品質証明員・澤木部長。一体どれだけ助けられたことか。現場経験も豊富な方なので、私たち三人では乗り越えられない場面も澤木部長のおかげでクリアできました。
この事業からは本当に、シーキューブの強さである「連携力」を改めて学びました。他部署との連携、他業者との連携、そしてメンバー同士のコンセンサス。結局、工事とは人と人とで成し遂げてゆくものなんですよね。たとえ、どんなに科学が進歩したとしても。