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アグリプロジェクトAGURICULTURE

Yさん

Yさん

アグリプロジェクト リーダー

Iさん

Iさん

アグリプロジェクト 農業ICTチーム

農業へ挑むことで実感した、チャレンジすることの尊さ。

シーキューブがなぜ農業を?

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シーキューブは、大手通信キャリア様から受注する通信インフラ設備工事や官公庁、企業から受注する通信・電気などのインフラ設備工事のほかソフトウェア開発などを事業としてこれまで成長してきました。これらのインフラ工事に続く新しい事業の柱を構築していきたいと考え、これまで培ってきた通信に関するノウハウを活用できて、かつ伸びしろのある新しい事業領域を検討した結果、いくつかの選択肢の中から〈農業ICT〉に白羽の矢が立ったのです。
少子高齢化等を要因として、農業の衰退が今後加速の一途をたどることが懸念され、農業が大きく変わる必要がある今。日本のアグリビジネスは、変革期たる今がチャンスだと考え、これまでとは違う大きな第一歩を踏み出しました。

事業コンセプトは〈自ら実践する農業ICT〉

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せっかくシーキューブがアグリビジネスに参入するなら、自分たちの手でICTを活用して農作物を育て、販売しよう。そしてその経験を元に、ICTを活用した〈新しい農業の形〉を作り、日本の農業の発展に貢献しようと決めました。事業コンセプトは〈自ら実践する農業ICT〉。
さて、いざ始めるとなったものの、私たちは、農業に関してはまったくのド素人です。しかしICTに関してはノウハウを持っている。そこでド素人なりに、ICTの得意分野である環境制御が実践しやすいフィールドは?と考え、ビニールハウスによるトマト栽培を採用しました。さらに、管理の難しい土を使わずに栽培できる方法として〈アイメック農法©※〉を採用。最新の農業技術であるアイメック農法©に、最先端のICT技術を掛け合わせることで、おいしさを極限まで追求した今までにないトマトをお客様に届けることができると考えました。
そして紆余曲折を経て、岐阜県加茂郡坂祝町に農地を確保し、当社初の試みであるアグリビジネスはスタートを切ったのです。

※アイメック農法©……メビオール株式会社が提供するアイメックフィルムを活用し高品質・高収量の栽培を可能にした栽培方法。

ICTを活用して挑むべき壁

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ド素人の自分たちが農業を自分たちの手で実践することで、たくさんの課題が見えてきました。例えば天候に左右されやすい不安定な収穫量です。
初めての収穫から1か月後の2018年12月、最初の壁にぶつかりました。予想を遥かに上回る収穫量だったおかげで、確保していた売り先以外に新たな売り先を見つける必要がでてきました。しかし、収穫した当日に他に新しい売り先がすぐに見つかる訳がありません。買い手のつかない哀しきトマト。泣く泣く、超低価格で販売しました。これが農業の泣き所です。農産物は鮮度が命であり、倉庫で保管しておくことができず、収穫できる分だけあらかじめ売り先を見つけておかなければなりません。
そして、その2か月後の2月。今度は逆です。収穫量が予測していた量よりかなり下回ってしまったのです。営業努力によって、せっかく販路を開拓したにも関わらず約束した数量が納品できない、という事態に陥ってしまいました。販売担当者が、ご迷惑をかけたすべてのお客様に繰り返し頭を下げたのは言うまでもありません。
いかにして生産量を予測、調整するか?いかにして需要と供給のマッチングを図るか?それはICTを活用して挑むべき壁でした。

農業のあらゆるものをデータ化し新しい農業の形を目指す

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まずは、ハウス内に設置しているカメラの画像のAI解析によって、収穫量を事前に予測する仕組みができないか、検証を進めています。トマトの色や個数をAIが判断し、収穫可能な量を事前に把握するのです。未熟な緑色から赤色になるまでの期間を加味すれば、1~2週間先の収穫量の予想が可能となり、事前に販売先との調整が行えます。それによって需要と供給のバランスも取りやすくなると考えています。
他にも、これからの農業は「大規模化」がキーワードになります。そのなかで重要となるのが、いかに効率的に作業を行えるかであり、そのためには効率の良し悪しについて、データでの見える化が必要になってきます。カメラやAIを活用して自動的に作業データを取得することができないかの検証を進めています。  ハウス内の環境をモニタリングして24時間の環境データを蓄積したり、ハウス内の苗の生育状態、作業する方の生産性、AIやICTを活用して農場内のあらゆるものをデータ化し、効率的なアグリビジネスを実現することがとても有益なものであると感じています。

確かな技術でお客様に食の安全を提供すること

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もう一つ、忘れてはならないのが食の安全です。安全な食をお客様にお届けするために、JGAPを取得しました。JGAPは、食の安全や環境保全などに取り組んでいる農場に与えられる認証・資格です。有名な話では、東京オリンピック・パラリンピックの選手村の食材に使われる農産物はGAP認証を調達の基準とすることが決まっています。検査項目は120項目程度あって、それらにすべて合格しないと認証を受けられません。そんな、かなりハードな審査を乗り越え認証を取得することができました。2020年の4月30日のことです。
この認証取得にあたっては、我々が長年に亘り、工事の世界で厳しい品質基準を守ってきた営みに共通するところが多く、決めたこと、決められたことをしっかり守ってきた企業風土やノウハウが役立っています。コロナ禍の影響もあり、お客様の食の安全に対するニーズが今後ますます重要になってくると思っています。
一年間販売を経験してみて、どこのバイヤーさんも食の安全についてはもう当然と考えていらっしゃいます。「甘くておいしい野菜」だけでは売れません。確かな技術でお客様に食の安全を提供することは、現代のアグリビジネスが負うべき当然の義務だと考えています。安全・安心・信頼の施工を提供してきた我々だからこそ、食の安全の面においても、全力を注いでいきたいと思っています。

「現実的に可能な」新しい農業の形を目指して

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企画・起ち上げから、農作物の安定供給、生産と販売の連携、販路の拡大……とまったく苦労の絶えない事業です。課題もやるべきことも山積みですし、今この場所で語れていない大変なエピソードもまだまだあります。しかし一方で、とても社会貢献性の高い、時代にフィットした事業であることも、自らが汗を流すことで痛感したことは事実です。毎年、トライ&エラーを繰り返しながら、一歩ずつステップアップしていきたいと考えています。事業コンセプトである〈自ら実践する農業ICT〉に加え、「現実的に可能な農業ICTの足場を固めること」を実現し新しい農業の形を目指そうと思います。
多くの発見やときめきもありました。エンドユーザーさんからは今や「シーキューブさんの美味しいトマトないの?」と聞かれることもあるそうです。ド素人集団は、たった一年で美味しいトマトを作り、たった一年で全国に販路を築きました。くどいようですが、プロジェクトメンバーはまったくの異業種からの参戦です。
チャレンジした者すべてが成功を遂げるわけでは決してありません。しかし、成功を遂げた者はあまねくチャレンジャーなのです。もちろん現状では、このアグリビジネスはまだ成功とは言い切れません。ですが新しい農業の形を目指し、多くの方が動き出しているのを肌で感じます。変化の流れはこの2~3年でさらに大きく加速するでしょう。肝心なのはアグリに携わるメンバー全員の熱意です。熱意があれば、チャレンジもきっと無謀ではなくなると信じて、毎日取り組んでいます。